可音のブログ

なんとなし気が向けば書きます

随分とお久しぶりです。驚きました。まさか再びご対面する事になるとは思わなかったのです。

いかがお過ごしでしたか?愛する人は見つけましたか?答え合わせのつもりなんてありません。ただそうであったら良いなと身勝手にも思ってしまったのです。

 

増えている筈の日々の記憶は、結局手持ちの物以外脳の隅に追いやってしまって、私が気付かないうちに緩やかに些細なものから消去されていきます。ですが、こうして貴方を目の前にすると不思議とどこからともなくあの日々の全てが呼び戻されて、心を支配するのです。狂おしいほど鮮明に。

 

人生の中で共に過ごした日々は2年と少しでしたが、今日まで私があるのは紛れもなく貴方の言葉達が私を支えてくれたからです。何も持たずこの世に転び出て、不器用に生きていた私に「生きる事は表現する事だ」と教えて下さったのは貴方でした。自我が恥ずかしくて嗤って誤魔化した事を真剣に叱って下さったのは貴方だけでした。

そう確か茄子の味噌炒めに少量のお酒を入れた方が豊かな味になる事や、秋刀魚やサザエのはらわたの旨みなんかに例えて、人生を味わい尽くすコツのようなモノを話して下さいましたね。真剣に話して下さっていたのに、例えがいつも料理だった事が妙にツボに入って本筋はあまり覚えておりません。今になってちゃんと聞いておけば良かったと後悔してもしかたないですね。

 

未熟さを気取られぬまま、順風満帆を装ってここまで来たのに、しかし今こうして貴方と向き合うとそのどれもが脆く崩れ落ちるようで怖いです。貴方の様に常に自我を認めてこなかったから制御不能な衝動を押し留めようと必死です。もう叶わない事だとわかっていても「生きる事は表現する事だ」ともう一度言って欲しいのです。

 

今になってようやっと「普通」など何一つ私を救ってくれないのだとわかりました。もしもまた私が自我を蔑ろにしてそこに舞い戻ろうと図ったら私を叱って下さい。貴方に次会うときは誇れる様に、人生を味い尽くしてから参りますから。

 

安らかにお眠り下さい。