可音のブログ

なんとなし気が向けば書きます

圧倒的妄想上の御来屋さん家の事情③

22時を少し過ぎた頃、《コンコン》と床下からノック音が聞こえた。

 

(来たか)

 

久遠は徐に床に敷いてあった絨毯をめくった。

床はタイル貼りで出来ており、そのなかに一枚、よくみると指が2本入る程度のくぼみがあるタイルがあった。久遠がそのタイルを持ち上げると木造の引き戸が現れそれを横に引くと2メートル下に京太郎の姿があった。壁にかかっていた梯子を登りいよいよ久遠の部屋に入った京太郎は辺りを見回すと小声で「良き」と呟いた。

 

12畳の久遠の部屋は天井が高く、東側は一面木製の格子で仕切られた結霜ガラスの出窓になっている。両脇は色ガラスが所々に施されたステンドグラスが施されていて久遠はそれが大のお気に入りだ。

部屋は赤褐色のサペリの腰壁が3面に施されており薄い桜色の壁によく映えている。

木製のベッドには草花模様のベッドカバーが付けられていて全体的に女性らしい落ち着いたインテリアになっている。

 

「こっちじゃプロデューサー。」

 

心なし鼻息が荒くなっている京太郎に淡々とそう告げると本棚を引き隣の《隠し部屋》に案内する。この部屋には電灯がないので、入ってすぐのところにあるランプにマッチで火をつけ奥の机に置いた。

 

「成る程ここが例の部屋ですね。一階なのに天窓がついている。普段はこちらから明かりとりされてるんですね。広さは4畳半か…。ふむ。……ん?これは…。」

 

「プロデューサー、ちょっとええかのぉ?出来たら早めに済ませたいんじゃが。」

 

「ああ、すみません。身内以外の女性の部屋に入ってた事など無いものでつい…。どれ、どこまで進んだのか見せてもらいましょうか…。」

 

机の上に置いてある《改良型全搭載パーソナルコンピューター》を開き久遠が指差した場所を京太郎が覗き込む。

 

「ここじゃ…ここから先がわからんのじゃ…」

 

「ふむ。確かにこれでは分かりづらい…。少し調整しますのでお時間頂いても宜しいですか?」

 

「ああ…じゃあわしは向こうの部屋で待ってま……プロデューサー、それどこで見つけたんじゃ?何で頭に付けとる?」

 

ランプの明かりでは暗い為近くに来るまで気付けなかったが京太郎の頭には狐の耳の形のカチューシャが装着されていた。

 

「この部屋に入ってすぐのランプが置いていたチェストの引き出しの中に入っていました。僕は普段ヘッドフォンを付けた生活をしているものでね。こうして何かに頭部を締め付けられている方が作業に集中出来るのですよ。どうです?似合うでしょう?」

 

「似合うかどうかの前に勝手にチェストを開けるな。そのカチューシャはわしが去年、学園祭のお化け屋敷で化け狐に変装していた時にしていたものじゃ。今すぐはず…」

 

「化け狐か…。さぞかし可愛らしかった事でしょうね」

 

「…そりゃあ、わしは何を付けても似合うからのぉ」

 

「そうでしょうとも。貴女がいつも付けている扇子の髪飾りも貴女が付けているからこそ一層素晴らしく見える。何でも映えてしまうんですねぇ。」

 

「褒めたって何にも出らんぞ〜!よっしゃ、作業に集中するとあれば、お飲み物くらい用意せんとのぉ〜」

 

「助かります。出来たら何か甘いものもあると有難いのですが。」

 

「任せるのじゃ!」

 

京太郎を《隠し部屋》に残し彼が来る前の状態に自室を整えた後、厨房へと向かいながら(はて、何かのせられた気が…)などと考えていた久遠の耳にひそひそと人の話し声が聞こえてきた。

久遠の耳は一般人より長く大きい。

その為静かな場所では普通の人では聞き逃す小さな音でさえも拾ってしまう。

聞く限り常駐の女中が2人、部屋の中で何やら話しているらしい。

足音を忍ばせつつ、女中部屋の扉に近づき耳をすませる。

 

「この前もそうだったのよ。朝、厨房の戸棚を調べたらお嬢様の為に用意していたキャラメルが半分以上消えていたの…。」

 

「おかしいわねぇ。誰かくすねているのかしら?」

 

「私もそれを疑ったわ。でも普段厨房には紅茶好きな奥様が出入りされていて隙がないし、お嬢様はいつも《懐中キャラメル》を持ち歩いていらっしゃるし太ももにも常備されているでしょう?私達も長くこのお屋敷に勤めているけれど今までこんな事なかったし……それがこの一週間毎日よ?」

 

「そうよねぇ…。戸締りはいつも入念に確認しているし……ひょっとして物の怪の類なんじゃない?」

 

「ちょっと!やめてよぉ…。怖い話苦手なんだから……。」

 

(物の怪じゃってぇ〜っ!!)

 

声にこそ出さなかったが久遠は震え上がった。

 

夜の御来屋邸は月明かりが廊下をほんのり照らしているだけの静まりかえった空間が続いている。

普段なら自室で読書しているか、もしくは寝ている時間なので気づかなかったが、夜になると広いわりに暗くてひと気のない邸内そのものが不気味な気がしてきた。

 

行くか、戻るか…。

 

しかし御来屋邸最奥部にある自室に戻るよりも今いる場所は厨房に近い。

しばし考えあぐねた結果、やはり厨房に行くことにした。

 

震える胸を抑え、恐る恐る厨房に入る。あの話を盗み聞きしたものだからやけに気味が悪い。

手早く照明を点けて紅茶を用意しようと例の戸棚を開けた途端、久遠は「ひゅっ」と息を飲んだ。

 

キャラメルが……無くなっている。

 

全てではなく、あの女中の話どおり半分くらい消えている。

こうなるともう紅茶だの菓子だの言っている場合ではない。恐怖がつま先から頭の先まで一気に駆け上がってきて、叫びそうになりながら大急ぎで厨房を飛び出した。

 

と、同時に…

 

「きゃああああああああっ!!」

 

「!!」

 

遠く、自室の方から叫び声が邸中に響き渡って久遠は心臓が止まる程驚いた。

 

一体何が起こったというのだろう。

誰の何の叫び声なのだろう。

まさか本当に物の怪が出たとでもいうのか。

バクバク心臓が早鐘を打って止まない。

 

耳元で鼓動が聞こえる様な感覚を覚えながら久遠は自室へと急いだ。

 

なんだか嫌な予感がする。まさか京太郎を忍び入れたのがバレたのか?

 

丁度自室前に差し掛かる頃誰かが付けたのだろう、廊下が照明で明るくなる。

久遠の部屋の扉は開いていて、女中が2人腰を抜かした様に部屋の前で座り込んでいる。

その目には恐怖の色が滲んでいて、今しがた信じられないものを見たといった様子がありありと伺えた。

 

「なんじゃ!?何があったんじゃ!?」

 

「あっ…お嬢様…ご無事だったのですねっ!?」

 

「⁇」

 

「で……出たのです!!」

 

「出たって…何が……」

 

一瞬、京太郎が脳裏を横切り背筋がスーっと寒くなった。

しかし女中の口から出たのは思いがけない言葉だった。

 

「出たのですよっ!!化け猫がっっ!!」

 

「化け猫ぉっ!?」

 

そこから女中をなだめて聞いた話をまとめるとこうだ。

久遠が女中部屋を横切り厨房へ向かった後、2人いたうちの《茜》という小柄な女中が、久遠の自室のある奥の棟の戸締りを一箇所だけし忘れたかもしれないと言いだし、怖いから2人で行こうともう1人の背の高い《秋》という女中とともに確認しに行ったところ、久遠の部屋の中から「ガタガタッ」と何かが動かされる様なな音がしたのだという。

色々と情緒不安定だった2人は音の正体が何なのか気になりノックして久遠に聞こうとしたが返答はなく仕方なし勝手にドアを少し開けて確認しようとしたところ、まず黒い何かが扉の向こうで横切り、続いて「ギギッ」っと窓が軋む様な音がして、慌てて扉をさらに開けた2人の目に映ったのは結霜ガラスの向こうに見えた大きな化け猫のシルエットだったのだと言う。

 

「シルエットだけでどうして化け猫だと?」

 

「大きな耳が付いてましたし……私達が踏み込んだ時確かに「ニャーン」って鳴いたんです!!」

 

まだ涙声でそう力説する茜にうんうんと頷きながら秋も続ける。

 

「私も聞きました!!確かに「ニャーン」って!!きっとあの化け猫がキャラメルをくすねていたんだわっ!!」

 

そうに違いないという2人にそうだとも違うとも言えないのは久遠ばかり。

十中八九、化け猫の正体は京太郎だ。

おそらく京太郎が何らかの理由で《隠し部屋》を出て本棚を戻したタイミングで、女中がその音を聞きつけ騒動になったのだろう。

 

キャラメルの件は謎を残したままだが…

 

兎も角これが後々語られ続ける「御来屋邸化け猫事件」である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的妄想上の御来屋さん家の事情②

《カラーンコローン》

 

平日昼下がりの喫茶《カカリコ》は閑散としていた。

カウンター8席にテーブル席4卓という小ぶりな作りでありながらオリエンタルな色調の雰囲気のいい店で、店内には珈琲の香ばしい香りが充満している。

カウンターにマスター1人と常連客が2人、テーブルにマダム達が3人いるが、気にならない程度の声量だ。

 

奥のマダム席から1席空けて2人は座った。

マスターの奥様らしきご婦人がメニューを伺いに来たので、京太郎はブレンドコーヒーを、久遠はサイダーとショートケーキを頼んだ。この店のショートケーキが絶品である事を久遠は物心つくかつかないかの時から知っていたのだった。

 

「プロデューサー、何でいつも珈琲なんじゃ?子供舌なんじゃから無理せずジュースを頼めばええものを。」

家の者に見られていない場所に来るとつい砕けた話し方をしてしまうのだが、これが話やすいんだから仕方がないと久遠は半ば開き直っていた。

「その場所に相応しいものを頼むというのが大人というものです。」

 

こんなにキリッとやせ我慢をされるとそれ以上は何も言えない。

 

確かに、出会いの日こそおかしな風貌だった彼も、次にあった時から今に至るまで身なりの整った立派な大人の男性を演出している。

初めて両親に挨拶に来た時などは一層凛々しかった。貿易商を営んでいて人を見る目が肥えたあの父でさえ「米倉くんならば安心だ」と太鼓判を押したほど口調も滑らかで実にジェントルメンだった。

 

(狸め…)

久遠が内心悪態をついたところで京太郎はふわりと笑った。

 

「ところでようやく準備が整ったので早速活動に移ろうかと思っています。」

 

「おおっ!遂にか!」

 

「ええ、随分とてこづって貴女をお待たせしてしまいました。思えば出会ったのが2月、今は4月で桜の頃ですからねぇ。」

 

「して、わしは何をすれば良いんじゃ?」

 

「平たく言えば自己紹介です。ただまだ此方の世界からあちらの世界に送れる容量が限られてまして…ちなみに僕が手を加えてお渡した《例のモノ》使ってみましたか?」

 

「それならば今朝も…あくせす?してみた…んじゃけど、アレ難しいのぉ〜。あともう少しでどうにか入れそうなんじゃけど…。」

 

「やはり一度僕が見に行く必要がありそうですね。しかして貴女のお宅はどうにも人目が厳しくていけない。」

 

そこまで話したところで頼んだ物が運ばれてきて、久遠はひんやりと冷えたサイダーを喉に流し込んだ。続けてショートケーキを一切れ口に運ぶ。甘さが口いっぱいに広がり生クリームの香りが鼻腔をくすぐる。

幸せそうな久遠とは反対に京太郎は渋い顔で珈琲を口に含んだ。「美味しい」と言ってはいるが半ば自分自身に言い聞かせているようでもある。やはり苦いのだろう。

 

「前にも話したがわしの家は先代から続く貿易商での?一時期はスパイ疑惑をかけられた事もあるんじゃって。商売上こうした事はよくある事らしいんじゃけどな?わしにはよーわからん。」

ここまで話して一旦サイダーを飲む。

しゅわしゅわと心地いい刺激を喉に感じながら久遠は一段声を潜めて続けた。

「じゃがそのせいかわしの家には《隠し部屋》や《隠し入り口》なるものが所々にあるんじゃ。わしの部屋の隣にもあるんじゃよ?」

 

「ほうっ!」と京太郎も声を潜めつつ驚愕した様子で言った。

 

そうなのだ。久遠が母に呼ばれるまで居た《本棚の向こう側》の部屋こそ、まさしくその隠し部屋なのだ。幸い家の者が気づいている様子は今のところ無い。

 

「隠し部屋…隠し入り口…これはもしや夜這いのフラ………」

 

「何をボソボソと邪な妄想を垂れ流しとるんじゃあ?」

 

ジェントルメンは表向き、裏ではこの男大概なスケべであるという事を久遠は既に把握している。

 

コホン。と咳を一つして真面目ぶって京太郎が続ける。

 

「…ちなみに隠し入り口はどちらに?」

 

「……わしの部屋じゃが?」

 

「なるほど。鍵は付いてるんですか?」

 

「当たり前じゃ。わしが持っとるしこの事自体わし以外は知らんじゃろう。」

 

「その合鍵、僕に一つくれたりは…」

 

「する筈ないじゃろ。」

 

「しないかあぁっ……!」

 

盛大な溜息とともにテーブルにうつ伏せる京太郎を冷ややかな目で見て、久遠も溜息をついた。

 

「…冗談はさておき、本題なんじゃが…。

……プロデューサー?………プロデューサー??」

 

「あい…。何でしょう……?久遠たん。」

 

「……顔上げろ。でなければ帰る。」

 

一瞬で顔をあげ、佇まいを直し元のジェントルメン京太郎に戻った。

 

「それで本題とは?」

 

「………。まあいい。わしの部屋の隠し入り口は地下に続いとっての?道を挟んだ向かいの倉庫に繋がっとるんじゃ。ほれ、あの煉瓦造の。」

 

「成る程。つまり僕は偶々都合のいいタイミングで来たわけだ。お父様が不在で人が手薄。明日は休日で倉庫に人の出入りもない。加えて言うなら今晩は新月。つまり女中やお母様が寝静まった頃合いを見計らって《隠し入り口》を通り貴女の部屋へ伺えばよろしいのですね。鍵は今晩に限りあらかじめ開けておいてくださると。」

 

ふざけたかと思えばこれだ。

察しがいいと言うかなんというか…

 

「…ま、まあそういう事じゃ。うちは大体夜の10時頃には皆寝静まる。その頃にまた。」

 

「わかりました。ですが宜しいのですか?いくら理由があろうとも深夜に男を部屋へ招くなど貴女もお嫌でしょう?いくら紳士的で真面目で堅実な僕であっても、うら若き乙女の部屋に…」

 

「じゃあ来ないんじゃな?」

 

「行きます」

 

こうして密談は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

圧倒的妄想上の御来屋さん家の事情 ①

「久遠!久遠!」

庭から母の声がして、久遠は急いで《ソレ》から離れた。

 

「なんじゃ?お客でも来たか?」

母の声の様子からそう察して慌てて部屋の片隅にある本棚に向かう。そして徐に棚を横に引き現れたこの部屋の唯一の〈入り口〉から隣の部屋に飛び込み本棚を元あった場所まで引き戻した。その本棚から適当に一冊取り出しあたかも読んでいるかのように装う…と同時に。

 

「久遠!……なんだ、居たの。居るならいるで返事して頂戴よ。」

ノックもなく飛び込んできた母を横目で流し見て久遠は溜息をついた。

 

「かか様。ノックをして欲しいといつも言っとるじゃろ?」

「貴女が返事をしないからよ。兎も角お客様よ。例のあの方。旦那様がお留守の時に殿方を招くのは…あまり…。」

「わしが出る。5件先の角の喫茶店にでも行ってくるから。」

「わかったわ。では頼んだわね❓」

 

支度を手早く済ませて玄関に向かうと手前の待合室に人影があった。

年の頃は20代そこそこといったところだろうか。三つ鱗紋の山鳩色着物に紫黒の薄手のコートを肩にかけ鈍色のハットを被り丸眼鏡を掛けた男が、窓際で革のソファに座り母が出したのであろう珈琲を優雅に嗜んでいた。

 

「お待たせしてしまって申し訳ないです。」

久遠が声をかけると窓の外を見ていた彼はこちらを向いた。

「良いんですよ。ちっとも待ってなんか居ませんし女性なら支度に時間が掛かる事くらい当たり前ですから。」

 

眼鏡の奥の瞳がフワリと笑う。

一見優しげなジェントルマンだがこの男がこう見えてなかなかくえないと言うことを久遠は把握していた。

 

「それに突然来た僕がいけないのですよ。今日はお父上はお留守なのでしょう?気を遣わせてしまって申し訳ないので、どうです?角の喫茶店に出掛けませんか?」

 

ほらやっぱり、と思う。

大方女中達の様子を見て察したのだろう。

それだけに留まらずこちらの提案まで先読みするとは、やはり侮れない。

 

「助かります。では行きましょうか。」

 

この男に久遠が初めて会ったのは雪がチラつく2月の事だった。母と五越に行った帰りしな「本屋に寄るから」と一人で銀座をぶらついていると明らかに見たことない風貌のこの男が電柱の傍にしゃがみこみ何やらシクシクと泣いていたのだった。恐る恐る事情を聞くとなんのことはない空腹に耐えかねて寒空の下で、良い歳して泣いているのだと言う。

仕方なく近くの軽食屋に入り、本を買うつもりのなけなしの金でオムライスを奢ったところ、申し訳ないですよと言いながらペロリと平らげこうのたまった。

 

「君、Vtuberになる気はないか?」と。

久遠の心中察するに余りあるだろう。

当然彼女は困惑した。状況も状況、相手も相手。そもそも聞きなれない言葉だった。

けれどその後その男は実に雄弁に自身の計画を語って聞かせたのだった。その勢いたるや凄まじく、2月にペラペラな長袖の黒の肌着姿なのに汗をかいているのが見てとれる程の熱量だった。

彼の話には驚くべき点がいくつかあったが、その中でも久遠が一番驚いたのは彼が未来人だということだった。始めは訝しんでいた久遠も、彼が見せてくれた様々なテクノロジーの結晶とやらの謎を解く事は叶わず、結局全てを鵜呑みにするほかなかった。

 

久遠の世界は現在大正23年。《ネオ大正》とのちにこの男から称される。

一方この男が来たのは平成という元号らしい。しかもその世界では大正時代は僅か15年で幕を引いたとの事。そうつまり単なる未来人では無くパラレルワールドの世界から来た異世界人でもあったのだ。その世界で彼はそこそこ名の知れた人物であり、プロデュース稼業の手初めに《Vtuber》なるモノに相応しい人物を探していたところ、何の因果か応報か此方の世界に転送されて来てしまった 、とここまでは久遠自身も話をしていた彼でさえも驚いてしまうほどすんなりと理解出来た。

 

問題は何故その《Vtuber》にあろうことか異世界のさらに言えば時代すら違う久遠を選んだのかという点だ。

聞こうとする3秒手前で彼は言った。

 

「何故?とお思いでしょうが僕は貴女ほど相応しい方はいないと断言出来る。銀座を一人で歩く姿がお若いのに様になっていた。それに所作が綺麗だ。育ちの良さと芯の強さが見て取れた。それでいて優しく面倒見がいい。普通こんななりの男に声をかけるなんて出来ませんよ。」

 

指で眼鏡をクイッと上げ、面食らって唖然としていた久遠にフワリと笑う。

 

「申し遅れました。米倉京太郎と申します。」

 

こうして2人は出会ったのだった。

 

 

 

 

 

一年後を踏まえた備忘録

私はかなり忘れっぽい。

抜けてるどころの騒ぎでは無い。

財布を持たずに買い物行って、慌てて財布を取りに帰ったらイヤホンも忘れてた事に気付き、イヤホンを持ちまた財布を忘れ買い物に行くくらいヤバイ。

 

なので夏の終わりに備忘録をつけておこうかと思います。

 

この夏は慌ただしかった。仕事もだけど7月頭に始めたフォロワー感謝祭をギリギリ8月末までに全て仕上げたし、合間にととちゃん神輿にあげようと企て、泣き顔、寝顔、おやすみくりゃあの3種目でほかのフォロワーさん巻き込んだリレー式選手権をしたり、米倉ピカソ京太郎のイラスト描いたり、アニメや動画もどきを作ったり、御来屋亭商品もどきを作ったりと創作活動に精を出した。

 

フォロワーさんとのコミュニケーションも増やした。

鯖缶、ヨクト兄貴、酒侍、カイ、はるまきちゃん、ララ、わかめっち…他にも沢山の方とあれこれやりとりしていくうちに仲良くなれたと思う。

私の化けの皮もこの夏で大概剥がれた気がする……。

 

夏にはマモノが潜んでいると聞くがこういうことなのか…。

まあなんにしろこれも人生の一興。

踊らにゃ損損‼️

 

秋が来ても冬が来ても、いつまでもこの夏の熱が続くといいな…。

 

 

 

セナ討論

成功するかどうか見届けて、対策を練ったのち私もオープンチャットに踏み出すか見極めたいと思っています…が。

 

うーんここまでの流れを見るに大半が見る専若くは参加しただけって感じだなぁ。

 

私の場合趣旨は明白でして、御来屋亭商品開発(自称)のアイデアや、第2回フォロワー感謝祭に関してや、イラスト、アニメなどの情報共有、その他とにかく御来屋およびセナさんに関するクリエイティブな意見交換をしたいなと思っているのです。

イラストやデザインだけでなく、小説やオリジナル設定、音楽、ポエム、動画、などのサブカルチャーとしての広がりと、コラボ企画、など発展した交流を目論んでいます。

作り手でない方もアイデアが何かに繋がるかもしれないのでアレコレやりとりして…。

 

みすみ、久遠厨、とと徒の垣根のない場を設けようかと…。

 

ただ、ゼルダ作品は一旦置きます。遊びのイラストならゼルダ絡めますが、話がゼルダに逸れそうだからです。そちらはセナ討論にお任せするとして。

 

あくまでオリジナルを主軸としたアイデアを出し合いたい。

 

実現するかどうかはわかりません…。

ひとまず検討中とだけ…。

 

人生は夢だらけ

椎名林檎嬢のこの曲を聴く時いつも再確認する。

一度きりの人生を獣道を通りながら貪欲に邁進しなければな、と。

 

私が作るものは小さくて慎ましくて、それでもみんながこの世にあって欲しい物でありたい。

 

セナさんが作るものが大きくて勇ましくて動かない永遠であるなら、私も永遠にそれを応援したい。

 

みすみであり久遠厨でありとと徒である。

この意識と、自身がなりたいクリエイター像がブレないようにただがむしゃらに作り続ける。

 

いつかはわたしも大きくて勇ましい人になれるように。みんなの心の安寧を導ける様に。

夏子さん

気のせいかもしれない…。

今朝家を出た時に感じた肌寒さ…

懐かしい空気の匂い…

 

毎年夏が来る前はうだる暑さを想定し憂鬱になり、しかしどこかで来るなら来いと気構えが出来ていた。挑む様な、ワクワクする様な。

 

 ああどうせリア充は海水浴だの祭だの花火大会だのイベントに出かけ、ひと夏の恋に華を咲かせるんだろうな…なんて妄想にも事欠かなかった。

 

お盆開けくらいにコンビニに出現したおでんを見て、鼻で笑ったりもした。まだお前の出番ではないと。

 

夏を擬人化するなら…何かと騒がしくかつ馴れ馴れしく、いつも一波乱起こし、それを高飛車に笑い飛ばす女……夏子だ。

決して好きにはなれない。親友にするにはあまりに鬱陶しい。言葉遣いもキツイ時があるし、空気を読むという事を知らない。

 

だけど…

 

今朝確かに感じた。

夏子は去った。

 

あんなに掻き乱しておいて、振り回すだけ振り回して…しかしてその強烈な余韻だけはしっかり残していく。…少し寂しくなる。

なんだったら次に来る秋子の方が好きだし、大親友なんだけど、なんだか寂しいのだ。

 

なんだよあっさりどっか行きやがって。張り合いがないじゃないか。

 

いや…まだわからない。

去ったと思わせてひょっこり顔を出すのも、彼女がよくやるイタズラだから…。